過激なレプリカ

模造品づくりにフルスロットル

「推し、燃ゆ」/宇佐見りん

芥川賞候補作。21歳の現役大学生、三島由紀夫賞最年少受賞作家。

 

 

推すことは私の生きる手立てだった。業だった。

 

 

推しを推すだけの夏休みが始まると思い、その簡素さがたしかに、あたしの幸せなのだという気がする。

 


推しを推すとき、あたしというすべてを懸けてのめり込むとき、一方的ではあるけれどあたしはいつになく満ち足りている。

 

おたくなので、連発されるパワーワードに骨の髄まで共感してしまうリアリティがあった。「私のこと?」と思うレベルで鮮明かつ生々しい。逆に言うとそれらの文体がキャッチーすぎて、高校生が主人公ということと合わせて、最初はブログを読んでるかのようなライトさが少し物足くもあり。

 

主人公・あかりが頭を抱えたくなるくらいの危うい人間なんだけど「推すことでダメになってしまう」のではなく「ダメな人間が推すことだけはできる」というほうだったので、痛々しくて読むのが結構しんどい。ただ、これがあるからこそ「アイドルに入れ込むのも若さゆえ」「青春」感が全くなく、良い。病気を受け入れられない家族、社会、という問題も孕んでいて厚みがある。

 

最後の畳み掛けがすごく良かった。「燃ゆ」という言葉にかけられた意味の回収、ちょっと説明的すぎたけど素人にはそれだけ丁寧だったからこそメタファーを読み取ることができたので助かった。推しが燃えたあかりがどうなってしまうか、その結論として最高のラストだと思うしシンプルにかっこよかった。

 

あとは「天皇小説としての読み方」という解釈をされてる方が多くて、この視点に気づいた時気持ち良いくらいぞっとした。

 

本体としおりの紐が青なのも、そういうことかと思えるので良いね。

 

短いので小一時間くらいで読めます。