過激なレプリカ

模造品づくりにフルスロットル

「オルタネート」/加藤シゲアキ

直木賞候補にノミネートされた話題の小説。

 

 

【第164回直木三十五賞候補作】
高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」が必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、若者たちの運命が、鮮やかに加速していく。全国配信の料理コンテストで巻き起こった“悲劇”の後遺症に思い悩む蓉。母との軋轢により、“絶対真実の愛”を求め続ける「オルタネート」信奉者の凪津。高校を中退し、“亡霊の街”から逃れるように、音楽家の集うシェアハウスへと潜り込んだ尚志。恋とは、友情とは、家族とは。そして、人と“繋がる”とは何か。デジタルな世界と未分化な感情が織りなす物語の果てに、三人を待ち受ける未来とは一体―。“あの頃”の煌めき、そして新たな旅立ちを端正かつエモーショナルな筆致で紡ぐ、新時代の青春小説。

 

加藤先生の作品は、とにかく「アーバン&ノーブル」。そして「設定が細かくて没入感が高い」。

 

設定が細かいとエゴな説明過多になるので最初は少し面倒に感じるんだけど、飲み込めてからは一気に読み進めたくなるし、最後には、もっと読みたかったなと感じる。この設定と世界観のまま、別の登場人物が出てくる続編を読みたいくらい。やり込み要素、みたいな感じ。

 

複数の登場人物を追いかけていて、各章ごとに主役が変わるので、物語を一気に進められないこと、好きなキャラクターの物語の分量が少なくなること、登場人物がめちゃくちゃ多くなることは割とストレスだった。だからこそ第22章「祝祭」で皆が一同に集結し、章の中で主役が次々入れ替わって、同じ日を共にしてる様子が大サビって感じで最高の山として機能していた。それが「学園祭当日」であることが、高校生を題材にした小説としての正しさを感じてとても良かった。そこに「ワンポーション」という、学外のネットイベントが入るのも今らしくて良い。

 

今回は、Twitterとペアーズが合体したような架空のアプリ「オルタネート」にまつわる高校生の物語だったけど、加藤先生はどちらも公式にはやってないわけで(ペアーズなんて特に笑)、どんな風に取材して、どんな風に着想を得たのかとても気になる。凪津が桂田に感じた苛立ちや拒否反応も、とてもリアル。最初にまとめた「アーバン&ノーブル」は、他意のない言葉のつもり。でもやはり褒め言葉でもあり、すかしてんなぁ!と感じるときもある。それでいて共感を呼ぶ痛々しいリアリティがちゃんとあるからすごい。朝井リョウに似た、自傷行為的な快感がある。

 

職業柄色々なことを言われやすく大変だと思うけど、本当に文章が上手く、まごうことなく文学なので、雑念なく読んで下さる方が多いといいよね、と文学部出身かつ近現代文学専攻だったアイドルおたくは思っております。

 

あと加藤先生の作品のもうひとつの特徴は、読んでいてしっかりと「映像が浮かぶ」。三浦くんが好きなので、実写化の際は私好みのイケメン俳優の手配お願いしますね!蓉もとても好きだったので、えみくには救われたなぁ。

 

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インスタに書いたものと同じなんだけど、長くなったのでこっちにも記録しておきます。2年半ぶりのブログが小説の感想になるとは。

 

昔から「書き終える」ことが苦手なので、ブログに上げようと書き始めて途中でやめてしまったエントリが相当数あるんだけど、古くなってしまったねたもちゃんと公開までいくのが今年の目標。